理事長あいさつ

理事長樋口和秀先生






一般社団法人日本潰瘍学会 理事長  
大阪医科大学第二内科  
樋口 和秀  






   竹内孝治理事長の任期満了にともない2017年11月20日の理事会で私が新理事長に選ばれましたことを皆様にご報告申し上げます。
   日本潰瘍学会は、実験潰瘍モデルを通して消化性潰瘍の病態解明、及び治療予防法の開発を目的として1973年に「実験潰瘍懇話会」として創設されました。その当時は、日本人では胃潰瘍が多く、現在のようにPPIやH2ブロッカーもない時代で手術に回る症例も多数ありました。 どうして腺境界にでき、再発を繰り返すのかなどわかっておらず、その病態を解明するために酢酸潰瘍モデルが開発されてきました。 種々の抗潰瘍薬の効果を見るスクリーニングのモデルとして全世界で使用されるようになりました。 同時にストレス潰瘍のモデル、NSAID潰瘍のモデルなど次々に開発され、盛んに研究されるようになりました。 その後、H2ブロッカーやPPIが開発され、ヘリコバクタ―ピロリも発見され、潰瘍は克服されたかのように思われました。 近年、ピロリ感染率の低下、食の欧米化、高齢化社会などで、消化管の潰瘍性病変の疾患構造が大きく変化してきました。 そこで、1991年から日本実験潰瘍学会と発展し、2005年から現在の名称に変更されました。 本学会で扱う研究対象も潰瘍研究の歴史的変遷に伴い変化し、食道のGERDからNSAIDやアスピリン起因性小腸潰瘍、潰瘍性大腸炎やクローン病など全消化管の潰瘍性病変など幅広く扱っています。 また、それらの病態を考える上では、消化管の防御機構、炎症、発がん、免疫異常、機能障害などの様々な病態解明にまで深く関わってくるようになってきました。 “潰瘍学・消化管学を極める”という点では一貫性を維持しています。 勿論、次代の消化器研究者の育成も本学会の重要な目的の一つであります。
   日本潰瘍学会の最大の特徴は、臨床と基礎の壁を乗り越えて「潰瘍学」を研究するという基本的理念に貫かれている点であります。 我が国には、消化管領域を対象とした学会は数多く存在しますが、潰瘍研究に関する多分野の研究者が一堂に会する学会は、本学会の他に見受けられません。 臨床は医師からの発表がほとんどを占めますが、基礎の発表は薬理、病理、および創薬など多岐に亘り、医学、薬学、農学、および企業の研究者も数多く参加されています。 最近では、腸内細菌叢の関わりで細菌学、免疫学、遺伝子工学などの分野も参入してきました。 このような意味からも、日本潰瘍学会は、ますます発展していくものと確信しています。 本学会の発展が、消化管の医療の発展・進歩に貢献することを願っています。ご支援、ご協力をお願い申し上げます。

2017年12月吉日